一年ほど前に、トヨタ生産システムのコンサルをやっている知人の紹介で台湾のある会社を訪問しました。

産業機械向けの部品を作っている会社で、従業員は200人くらいでしょうか。
この会社がすごかった。

収益は右肩上がりで、しかもすべての社員が生き生きと働いていました。
社長は、文字通り成功者で、台湾の豪邸に住んでいます。
その豪邸に招待いただいて、豪華な食事をご馳走になりながら色んな話を聞くことができました。

しかし、この社長、偉ぶったところは全くなくて、とても姿勢が低く、本人のお話しも面白かったのですが、社長からも私たちにたくさんの質問をいただき、まさに他人から学ぼうとする姿勢が半端ありませんでした。

食事に呼ばれた翌日に、工場見学をさせていただいたのですが、冒頭に社長から、

「本当は先生たちからたくさんお話しを聞きたいのですが、今日は時間も限られているので、まずは私どもから工場の説明をします。途中、お気づきのことがあれば、どんなことでもしてきしてください。」

とのことでした。

社長自らが先頭に立ち、極限までの改革を見せていただきました。
すべてを書ききれませんが、一例を挙げておくと、生産のリードタイムを5日間だったものを、まずは、4時間にすることにチャレンジし成功すると、さらに30分を目指して、まさに達成できるところまで来ていました。

在庫を極限まで減らすことに挑戦し、部品、仕掛り、半製品、製品在庫すべて含めて売り上げの0.6%、つまり在庫回転率でいうと150回という驚異的な数字を達成しています。
私自身はEMS企業にも在籍していたので、工場はたくさん見てきましたが、動いている工場でここまできれいな工場は見たことがありませんでした。

この会社では、新入社員に最初に教えるのは(入社当日の午前中)、トイレを使ったら水一滴残さずにきれいにすることだそうです。
これは、次工程はお客様ということを最初から徹底させるためだそうです。

安いときに部品を買うということも、在庫が増えるならば”悪”と考えるのだそうです。
お客さんへの納品にもかなり手を入れていて、お客さんや納入業者を巻き込んで、教育しながら自社が成長していっているようでした。

ここまでやったら、他にやることはありませんね。と私が言ったら、社長と周りの人たちが同時に、

「何を言ってるんですか?やることは山ほどあります。我々はもっと強くなってグローバルで戦う企業になりたいんです。だから、先生たちからも学びたいんです。」

とおっしゃる顔が、本当に幸せそうでした。