北関東地区で40年にわたって製缶業を営むW製作所での事例です。
5年ほど前に創業社長である現社長の父親が、体調崩され80歳で他界。早くから事業承継を勧めていたが、創業社長の強い意志で実現していなかった。
急遽、バトンタッチを受けた現社長ではあるが、先代からの細かな引継ぎを受ける間もなくの船出となった。
幸いなことに先代社長が長年にわたり営業部門を任せ、右腕として信頼を寄せていたベテラン管理職が“先代に育ててもらった恩返し”と言って、協力的であったことはありがたかった。
当社は大手食品会社から缶詰製品に使用する製缶の受注が中心であり、元請け4社で売り上げの75%を占めている。元請け企業が企画した製品(缶)の生産が主であり、最近10年間ほどは社内において新規製品の開発はなく、当然営業も既存の受注先へのルート営業が主体となっている。
この現状に懸念を感じた社長は前出のベテラン管理職と生産部門の管理職に対して「新製品の開発」と「攻めの営業スタイル」を構築したい旨打診した。 2人の管理職はそれぞれの部門へ持ち帰り検討してくれたが、早速翌日に回答があり「社長の考えは分かるが、現在の当社ではそれには対応できない」というものであった。大きな理由は「先代が築いたやり方を変えることへの抵抗感」ということのようである。困った社長に追い討ちを掛けるように前出のベテラン管理職が「若社長の考え方にはついて行けそうにもない」と退職を申し出てきた。
現状を打開し、今後どうすべきかについて相談を受けたタジマコンサルタントは、ひらめいた! これは「 二代目社長支援研究会の出番だ!!」
早速、研究会のメンバーに声をかけ、いろいろ検討していただいた結果、下記の対策を打つこととなった。
対策① 現状と今後に向けてどうしていくべきか! 製造部門、営業部門、管理部門等々の全社員に社長から直に説明し、現場を担当する社員の生の声をまず部門ごとに集約すること。(田嶋)
対策② 新製品の開発に向けて、どのような準備が必要で、どのように具体的に進めていけばよいのか?を専門家に相談する。(賀門)
対策③ 退職を申し出たベテラン管理職の意向は尊重することとし、 2年計画で新たな“社長の右腕”と成り得る人材を育成する。(山碕)
当初、相談を受けた時点で田嶋も情報を持っていなかったのですが、当社は8年前に新製品の開発に着手した経緯があり、その際に「密閉性は高いが、女性の腕力でも比較的簡単に開閉できる缶の蓋」を開発し、特許を取得していることが判明。しかし、当時大手食品メーカーの製品で、そこまでの機能を缶の蓋に求める製品の販売が予定されてなく、現在までこの「蓋」は日の目を見ていないことがわかった。これはもったいない! そこで、
対策④ この特許が現在どれほどの価値があるのか? この特許をどのように使用すれば「儲かる特許」になるのか? 等々を検討する(橘)
当社はこの他にもまだいくつかの課題を抱えていました。しかし2代目社長がこの方針を打ち出して以降、会社が進む方向が明確になり、先代の残した古き良きものは守り、一方では変えるものは思い切って変えていく!ことが根付いてきました。
現在は、開発された新製品を中心に攻めの営業が定着し、新規の取引先も開拓が進んでいます。信頼できる右腕が育っています。